スクールカウンセラーとは


スクールカウンセラーは、学校で働く心理の専門スタッフです。

児童生徒の成長や保護者の子育てを教職員と共に支援するため、カウンセリングや心理的ケアなどの、さまざまな仕事をしています。


 

 

 日本でスクールカウンセラーが誕生したのは、1995(平成7)年です。正確に言うと、学校は4月1日~翌年3月31日の「年度」で動いていますので、1995(平成7)年度です)

 

1995(平成7)年4月24日、文部科学省から「スクールカウンセラー活用調査研究委託実施要綱」が出され、全国の公立の小学校・中学校・高校で配置がスタート。2000(平成12)年度までは、国が費用を全額負担するかたちで実施されました。

その後、2001(平成13)年度から、「スクールカウンセラー活用事業」に名称が変わりました。国と都道府県・指定都市とが費用を分担するようになり、現在もその形で継続しています。

なお、国が都道府県・指定都市に補助する金額は、2001(平成13)年度~2007(平成19)年度は1/2でしたが、その後は1/3に減っています。

それでも、事業費全体は増加を続け、配置される学校の数が増えていきました。

スクールカウンセラーが誕生した背景には、いじめ、不登校の激増があります。

不登校は、「登校拒否」と呼ばれていた1975年ごろから右肩上がりに増加し、「不登校」という名称に変わった1997(平成9)年以降、小学校と中学校の義務教育段階の不登校は12万人前後で推移しています。

一方、 いじめ問題は1980年代半ばごろから社会的注目を集めるような事件が学校で起こるようになりました。いじめを原因とする不登校や自殺などへの対応や予防のため、心理に関する専門家を学校で活用しようという動きにつながりました。


 

スタート ~2000(平成12)年度 

最初の「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」は、1995(平成7)年度に配置校数154校(全国)で始まり、2000(平成12)年度は2,250校にまで増えました。

その目的は、次の2点に置かれていました。

1.カウンセリングなどの専門的な技法を通じて、激増するいじめや不登校に対応する。
2.教職員がカウンセリングマインドを持って児童生徒に対応できるように援助する。
(平成19年5月15日 教育相談等に関する調査研究協力者会議第2回配布資料より)

そして、同資料には「その後この制度によって配置されたスクールカウンセラーは、不登校やその他の多くの問題行動に対して大きな成果をあげることができ、学校へのカウンセラーの配置が有効であるということが実証され、年々配置される人員、学校の数が増加しつつ現在にいたっている。」とあります。

 

 その一方で、「スクールカウンセラー」という専門スタッフが学校になじみにくいという声もあったようです。後に「チーム学校」という考え方が示されるのは2015(平成27)年ですので、それまでの間、学校現場ではスクールカウンセラーの受け入れについて試行錯誤が続いていたと言えます。

 2001(平成13)年度 ~ 現在

2001(平成13)年度から、国と地方自治体が費用を半分ずつ負担するかたちになり、配置校数は前年比で約2倍に拡大しています。補助率が1/2になった代わりに、都道府県だけでなく指定都市にもお金が出るようになったことが、配置校数の増加を促したと考えられます。

スクールカウンセラー制度の目的も、当初の2点から拡張していると言えるでしょう。

都道府県・指定都市から国への報告書を見ると、例えば、「平成30年度スクールカウンセラー等活用事業実践活動事例集」には、不登校やいじめだけでなく、SNSを巡る問題や発達障害など、技術や医学の進歩に伴う新たな課題が見られます。

逆に、スクールカウンセラーが誕生して25年も経つのに、まだ模索中の課題があります。それは、当初の目的の「2.教職員がカウンセリングマインドを持って児童生徒に対応できるように援助する」に関連する、教職員との関係づくりです。

誰しも意識が変わるまでには時間がかかりますし、教育と心理という互いに専門家としての業務における遠慮もあるでしょう。

そこに、2015(平成27)年末、中央教育審議会から「チーム学校」という考え方が示されました。

学校や教員が心理や福祉等の専門スタッフ等と連携・分担する体制を整備し、『チームとしての学校』において教職員一人一人が自らの専門性を発揮すること。そして、心理や福祉等の専門スタッフ等とともに課題の解決に求められる専門性や経験を補い、子供の教育活動を充実していくことなどが盛り込まれています。

まさに、スクールカウンセラー活用事業が当初から目的としていたところです。

その3年後の「平成30年度スクールカウンセラー等活用事業実践活動事例集」では、「専門性」「チーム」などの言葉が散見されるようになり、現在も取り組みが続いています。

実は、スクールカウンセラーはカウンセリング以外のこともたくさん行っています。

 

2007(平成19)年7月に出された文部科学省「教育相談等に関する調査研究協力者会議」報告書では、スクールカウンセラーの役割について、次のようにまとめています。

(カウンセラー個人の考え方や学校の方針などで異なることがあります)

 

①児童生徒に対する相談・助言

②保護者や教職員に対する相談(カウンセリング・コンサルテーション)

③校内会議等への参加

④教職員や児童生徒への研修や講話

⑤相談者への心理的な見立てや対応

⑥ストレスチェックやストレスマネジメント等の予防的対応

⑦事件・事故等の緊急対応における被害児童生徒の心のケア

 

この中で、①②⑤がカウンセリングに相当します。

 

カウンセリングと言っても特別に設置された部屋で行われるとは限らず、教職員とは職員室の片隅で立ち話ということもよくあります。相談者に応じて時間を調整したり場所を探したりするなど、スクールカウンセラーには臨機応変さが求められます。

 

③の校内会議とは、教育相談部会やケース会議などを指します。会議では、例えば児童生徒の状況について心理面からどのように見えるのか、あるいはどのような対応が有効と思われるのかなど、心理の専門家としての意見が求められます。

 

④の研修や講話では、教職員を対象としたスキルアップもあれば、児童生徒に授業のひとつとしてソーシャルスキルトレーニングなどを行うこともあります。⑥の予防的対応と重なる部分があります。リクエストに応じて内容を組み立てなければならないことが多く、スクールカウンセラー自身も日ごろの勉強や新しい知識を得る努力が欠かせません。

 

⑦はスクールカウンセラーの役割としてメディアなどで取り上げられることが多く、周知されていると言えるでしょう。実際には、出来事の重大さや影響する範囲に応じて、学校に配置されているスクールカウンセラーが対応したり、自治体から緊急派遣が行われたりします。

 

ここまで、冒頭にあげた役割を順に見てきましたが、実際にスクールカウンセラーがしていることは他にもあります。

 

・授業中の子どもたちの観察

・広報活動(校内や家庭に向けたお便りなど)

・アウトリーチ(家庭訪問、手紙、電話など)

 

また、休み時間に校内を歩き回って子どもたちに声をかける、放課後に校内を回って教室に残っている先生方と雑談も含めていろんな話をするなど、スクールカウンセラー自身の考えを仕事に反映しやすいところがあります。