「あれ?ウチの子、今日はちょっと変?」「 もしかして学校が嫌なの?」
朝なかなか起きてこないのは子どもの常ですが、いくら起こしても嫌がったり、出かける時間なのにグズグズしていたり。
そんな子どもの様子を見ると、「学校に行きたくないのかな。」、「何か嫌なこともでもあったかな?」と心配になります。
子どもには自分の気持ちに気づきにくく、上手に表現できないところがあります。特にこころの不調は適切に伝えられない
場合が多いのです。
大人は子どもより言葉をたくさん知っていますし人生経験も豊富なので、自分のこころの状態に気づいてすぐにどうしたら
いいかを考える、誰かに話してみるなどの対処ができます。また、自分のことだけでなく他人のこころの状態にも気づいて
「助けようか。どうしようか。」などと考えます。
いっしょにいる時間が長い家族のことは特にアンテナが働きやすく、気になるときが多いもの。でも、どう声をかけたらいいのか、悩むことはありませんか?
「みんな頑張ってるんだから、あなたもちゃんとしなさい!」
「なんでみんなと同じようにできないの!」
子どもがあいまいな返事を繰り返したり煮え切らない態度でいると、つい責めるような言い方をして後から後悔することに
なりがちです。
まず、基本的に子どもは学校に行くことが当たり前だと思っている前提で話すことが大事です。子どもの多くは自分が過ごす場所として学校を認識しています。だからこそ、そこに行こうとするのに動けない自分に戸惑い、行きたくないと思う自分を責めるのです。また、こころの不調は誰にでも起こりうるといった人生経験や気持ちの余裕を持ち合わせておらず、「自分はどこか変なんじゃないか。」とひとりで悩みを抱え込み苦しみします。
そんなときに大事なのは、おおぜいの中の一人ではなく、かけがえのないたった一人の存在であることを伝える声かけです。
「あなたのつらさ」や「あなたの苦しみ」をその子ども固有のものとして受け止めていることを伝え、「あなたの解決策」をいっしょに考えようとすることが安心感につながり、「この人になら話してみてもいいかな。」と思えてくるのです。
大人から見ると、努力が足りないように見えたり、特に問題なさそうな他の子どもと比較してダメなところばかりが目に
ついてしまい良いところが見つからないと思ってしまったりします。
大事なのは、どの子もその子なりに頑張っていると認めることです。それは、がんばって長所短所を探そうということでは
なく、毎日の生活の中で子どもを観察しながらちょっとした言葉や動きから拾い上げるということなのです。
「今日は準備が早いね。何かあるの?」、「脱いだ靴を揃えるなんて、いつ習ったの?」など、気づいたことがあったら
さりげなく話題にします。それが、「あなたのことを気にかけていますよ。」というメッセージとなり、子どもはうれしさを感じ、また自分の存在を確認できるのです。
子どもがしょんぼりしていると励ましたくなりますが、まずはこれまでの頑張りを認めてねぎらい、現状を切り抜ける方法をいっしょに考えたいという気持ちを伝えることで、子どもは現実と向き合う勇気を出そうと思うのです。
何か問題が起こると、誰しも原因を探して解決しようと考えます。でも、見つからないことも多いのではないでしょうか。
原因探しをしているうちに状況が悪くなることもあります。それを防ぐには、ある程度のところで視点を切り替えることが
大事です。
状況を変化させるには、子どもの考えだけでなく、大人の知恵も必要です。「こうなったらいい。」というイメージを
共有し、「どうすればそうなるか。」をいっしょに考えるのです。
声かけのポイントは理解できるけれど、実際にその場に立つとどんなふうに話したらいいか難しいかも、と思われるかも
しれません。ここからは、そういうときに役立つ会話の技術についてご紹介していきます。
一つ目は、「相手が話した言葉を繰り返す」技術です。簡単そうですが、これが意外と難しいのです。
まず、相手の話を聞きながら、どの言葉を取り上げようか考えなければなりません。いくつか言葉をピックアップして、
重要度をつけるのです。
相手「いつも弟はかわいがられて、僕は叱られてばっかりで、ほんとイライラする!」
↓
「そうなんだ、自分ばっかり叱られると思ってるんだね。」、「イライラするんだ。」
言い方はそれぞれだと思いますが、基本は相手の言葉をそのまま使うということです。
なぜなら、ここで大事なのは、「あなたの話を真剣に聞いている、もっと聞かせて。」というメッセージが伝わって、
「この人になら本当のことを言ってもいいかな。」という気持ちを持ってもらうことだからです。
会話の技術二つ目は、「オープンクエスチョン(開かれた質問)」です。
質問のとき、例えば「Aなの?」と尋ねると相手は「はい。」や「いいえ、Bです。」などと返答することがほとんどです。
「Aなの?」と聞かれて「はい、Aです。Aは私にとってとても大事で、なぜ大事かというと…。」というふうに続けて話し
出すことはあまりないでしょう。
なお、「はい」「いいえ」で済んでしまう質問は「クローズドクエスチョン(閉じた質問)」と呼ばれます。
オープンクエスチョンは相手に語ってもらうことを目的とします。
相手「いつも弟はかわいがられて、僕は叱られてばっかりで、ほんとイライラする!」
↓
「あなたはどうしてほしいの?」、「これから叱られたときはどうしようと思ってる?」というふうに、相手の思いを
なるべくたくさん引き出すように質問してみましょう。
会話の技術三つ目は、「考え方、長所を認める」視点です。
ちょっとした出来事を深刻にとらえて「自分はやっぱりダメだ。」、「いいところなんかひとつもない。」と感じたり、
子どもの心は揺れ動きます。
そんなとき、「頑張れ。」と励まされてもどう頑張っていいかわからないかもしれません。あるいは、自分に何かできるか
思いつかないかもしれません。日常的に子どもをみている周囲の大人が、その子どもに具体的に良いところを伝えると
子ども自身が気づいていないところに目を向けることができます。
心配なときだけ声をかけるのではなく、日ごろから良いところを子どもにフィードバックするようにしましょう。
いつもエネルギーチャージしてもらっていれば、何か問題を抱えても自分を信じて解決に向けて動きだすことでしょう。
会話の技術四つ目は、「話した内容を要約して確認する」技術です。
大人でも何か問題を抱えて相談しようと考えたとき、何から話そうか、そもそも何を話したらいいのか迷うことがあります。子どもは大人より知っている言葉が限られますし、相手の理解度を図りながら話すという意識も薄いため、話を聞いている方は何が言いたのかよく気をつけて聞く必要があります。
余計なおしゃべりも多いなか、大事な言葉を拾い上げるには集中力が要ります。しかも、拾い上げた言葉を整理して文章に
仕上げるには豊富な語彙力が欠かせません。慣れも必要です。
でも、子どもは自分が話したことを要約して示されると、自分が何を考えていたか整理できるとともに、頭の中がスッキリ
して他の事柄に目を向ける余裕を持つことができるようになります。つまり、問題解決に向き合えるようになるのです。
会話の技術五つ目は、「アイメッセージを返す」技術です。
子どもにこうして欲しいと思うとき「○○しよう。」「○○すると上手くいく。」というふうに相手の言動に対する希望や
意見になりがちです。これだと、言われる方にとっては指図される内容はわかってもやる意味や動機が見出せません。
「自分が話したことに意味があった。」と感じるには、話をしたら感謝されたという経験が必要です。あるいは、自分の行動について喜んだり心配したりする人がいると思うと、やる・やらないための動機づけになります。
そのためには、子どもにこうして欲しいと思うことに加えて、それをやるとどういう気持ちになるのかを付け加えて話す、
つまり話す方が自分を主語にしてメッセージを送ることが大事なのです。
「○○しよう。」「○○すると上手くいく。」 → 子どもがやるので、子どもが主語
「あなたが○○するとうれしいよ。」 → うれしいのは子どもではなく自分なので、話す方が主語
全てをアイメッセージにしなければならないということではなく、子どもに動いて欲しい内容でアイメッセージを使うのが
コツです。
ここまで多くのポイントをご説明しましたが、全てを取り入れなければならないというわけではありません。
実際の話の流れでは、使える・使ってみようと思うものを選んでくださいね。また、順番も気にする必要はありません。