子どものことがもっとわかるようになる!
心を理解するために役立つ知識をコンパクトにまとめています。
<スキーマ>
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普段あまり意識されず心の奥底にしまい込まれている思いを、
心理学の用語でスキーマと呼びます。
「自己イメージ」や「他者や世の中に対するイメージ」など、
自分に関するものも自分以外に関するものも両方あります。
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複雑に見えますが、経験を通じてスキーマを獲得し、
無意識のうちに自分で自分を縛る考え方をしてしまうため、
生きづらさを感じるのです。
幸せにつながるスキーマを得るために満たされる必要がある感情欲求
① 安心したい、理解されたい、愛されたい
② 自信を持ちたい、ほめられたい、しっかりしたい、挑戦したい
③ 自分の欲求・感情・意思を大事にしたい・されたい
④ 楽しい暮らし・人生を送りたい
⑤ 誰とも平等で、互いの権利を大事にしたい
自分を痛めつけるスキーマに気づき、
楽にするスキーマへの変換を目指す「スキーマ療法」があります。
時間はかかりますが、必要に応じてセルフケアできるようになります。
<強迫性障害>
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「家のカギかけたっけ?」「エアコン消したかな?」など、
心配した経験は誰にでもあると思います。
しかし、日常生活に支障をきたすほど強く頻繁に不安になってしまう場合、
「強迫性障害」と診断される可能性があります。
症状
<強迫観念>
意思に関係なく、また不合理だと思っても頭に浮かんで離れない考え
<強迫行為>
確認を繰り返す、手洗い等、特定の行為を過剰に繰り返す状態
強迫性障害かどうかは、
不安や強迫行為による心身の消耗の度合い、本人や家族がどれくらい困っているかなど、
日常生活や周囲の人たちへの影響を勘案して診断されます。
治療
・不安を軽減する抗うつ薬など
・不安な状況に対する抵抗力を上げるための認知行動療法など
支援
本人が「これではいけない。」と思っても、
もう自分で自分をコントロールできない状態になっている場合があります。
考えを改めるよう迫ったり止めさせようとする前に、
まず本人のつらさに共感し「責めずに心配してくれる人」がいることで安心感を抱き、
自ら受診や治療に向かおうという気持ちになるよう接することが大事です。
<摂食障害>
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コロナ禍以降、摂食障害に悩む若者が増えたように感じます。
マスクで相手の表情がわかりにくい、一緒に遊べないなどのストレスに加え、
在宅時間増で運動不足になり体重が気になる、一人で過ごす時間が増えたことで
自分の容姿への関心が高まるなど環境変化の影響が大きいのではないかと思われます。
摂食障害の代表的なものは以下の通りです。
①神経性やせ症…過食/排出型、摂食制限型
食事量を極端に制限し、明らかにやせていても異常だと感じられない。
食事制限の反動で過食し、その後に嘔吐や下剤で排出するケースも含む。
②神経性過食症…過食と体重維持行為
食のコントロールができず過食するが、嘔吐などで体重を維持しようとする。
③過食性障害 …過食を繰り返すが体重維持にこだわらない
摂食障害では、栄養不足や免疫力低下により身体的な病気になりやすく、
抑うつ気分や孤立感の高まりから自殺につながりやすいと言われます。
また、本人が「これではいけない。」と思っても
自分で自分をコントロールできなくなっている場合がありますので、
本人の希望を確かめながら周囲がどうサポートするか考える必要があります。
学校における対応は、本人や保護者の話に耳を傾けて信頼関係を作り受診につなげること、
および保護者との情報共有が大事です。
<自傷行為への対応>
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コロナ禍が長引く中、ストレスや孤独を強く感じている人が増加していると言われています。
児童生徒も例外ではなく、リストカットなど 非致死的な方法で自分の身体を傷つける行為 が後を絶ちません。
何のため? 身体の痛みで心の痛みを忘れる、生きている実感が得られる
心情 ・一時的であっても楽になりたい、スッキリしたい
・他人に迷惑をかけなくて済む方法(を選んでいるつもり)
心理的背景 自己否定、感情コントロールの未熟さ、疎外感・孤独感
必要な対応 ・つながりの意識や所属感が持てるよう接する
・何か(誰か)に貢献する経験により自尊感情を高める
・安心して語れる場を作る
●学校で自傷行為に気づいたときは…
継続的に関わるために複数人で対応
常に誰かの目が注がれ必要に応じて声がかけられる体制を整えるためには、2人以上でチームを作りましょう。
児童生徒の見立てを持ち寄って検討したり、役割分担して心理的な負担を減らしたりすることが重要です。
じっくり話を聴く
自傷行為について、親に言わないでほしいと児童生徒が望むことがあります。
自傷行為は児童生徒からのSOSだと捉え、責めずにじっくり気持ちを聞いていくと少しずつ気持ちがほぐれ、
「この人なら助けてくれるかも。」という考えに変わっていきます。
すぐに止めさせようと焦らないことが重要です。
<TALKの原則>
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新型コロナウイルス感染症が広がって以来、子どもたちの生活は激変したと言っていいと思います。
常にマスクをしなければならない、友だちとワイワイ話せない、家でも学校も制限されることが多くて
窮屈に感じるなど、子どもたちがストレスを感じる場面が増えたことで、とても残念なことですが、
子どもの自殺が増えています。
そこで、最近、注目されているのが「TALKの原則」です。
①Tell:言葉に出して心配していることを伝える。
②Ask:「死にたいと思うほどつらい気持ちの背景にあるものについて、率直に尋ねる。
③Listen:絶望的な気持ちを傾聴する。
④Keep Safe:安全を確保する。(危険と判断したら、まず一人にしないで寄り添い、
支援者も一人で抱え込まずに他からも適切な援助を求めるようにする。)
本人が「死にたい。」と訴えているときは①や②のように直接的な話をするのに抵抗はないと思いますが、
自殺が懸念されても確証はないというあやふやな場合は、つらい気持ちの程度(死にたいと思うほどかどうか)
を尋ねてみるのもいいと思います。
そこで大事なのが「心理的安全性」です。例えば、学校で先生や友だちに自分の考えや気持ちを
安心して言える、聞いてもらえる と感じられれば、つらい時は誰かに相談してみようとなります。
そのために重要なのは、以下の3点です。
● 否定・批判されない
● 気持ちを受け止めてもらえる
● 人として尊重されている
心理的安全性は、自分の心に向き合う勇気を与えてくれる環境なのです。
<空の巣(からのす)症候群>
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中学・高校で3年生がそろそろ部活を引退するこの時期、相談が目立ってくるのが環境変化による心身の不調です。
これまで一生懸命に部活に励んできて、思い入れが強いほど症状が強く出やすいと言えます。
<状況変化> <心身の変化>
・向き合う対象がなくなる ⇒ ・喪失感、寂しさ
・勉強中心の生活に変わる ⇒ ・生活変化に対する戸惑い、抵抗感
・人間関係が変わる ⇒ ・気持ちを共有する相手を失う、孤独感
今までエネルギーを注いできた対象を失った喪失感や空虚感により心身の不調が現れる状態を
「空の巣症候群(Empty nest syndrome)」と呼びます。
もともと子どもが自立して心にぽっかり穴が開き、食欲不振や倦怠感、孤独、無気力などが続く場合を指しますが、
今はもっと広く使われます。
<対処方法>
・新たな生きがいや目標、役割を見つける
・症状が長引く場合は受診(うつ病など精神疾患の可能性があるため)
「空の巣症候群」は一過性の「うつ状態」(適応障害も考えられる)とされています。
“怠けているのではない”、“思考力が低下しているから行動に気をつけよう“など、
本人や周囲が状況を理解し、新たな希望を模索するなかで回復に向かう可能性が高いのです。
なお、似たような症状に「バーンアウト(燃え尽き症候群)」があります。
意欲や責任感を持って取り組んでいたのに、突然、エネルギーが枯渇したかのように
極度の心身の疲労を感じて動けなくなる状態です。エネルギーを向けていた対象は変わらず存在している点が
「空の巣症候群」と異なります。
<起立性調節障害>
最近、不登校状態や遅刻が多い児童生徒が医療機関で「起立性調節障害」の診断を受けることが増えています。
思春期に発症しやすく、自律神経による循環(血流)調節に問題があるのではないかと考えられています。
主な症状
立ちくらみ、失神、気分不良、朝起床困難、頭痛、腹痛、動悸、食欲不振、午前中に調子が悪く午後に回復する、
車酔い、顔色が悪いなどのうち、3つ以上、あるいは2つ以上でも症状が強ければ起立性調節障害を疑う
医療機関における診断
① 似たような症状を示す他の病気の可能性を調べる。
② 「新起立試験」を実施してサブタイプを判定する。
③ 心理社会的因子(内的な葛藤)を調べる
<サブタイプ>
① 起立直後性低血圧 :起立直後の強い血圧低下と血圧回復の遅れ
② 体位性頻脈症候群 :起立中に血圧低下を伴わず著しく心拍数が増加する
③ 血管迷走神経性失神:起立中に突然、収縮期・拡張期血圧の低下と起立
失調症状が出て意識低下や意識消失発作を起こす
④ 還延性起立性低血圧:起立後3~10分過ぎてから収縮期血圧が強く低下
治療
●生活上の工夫…脳血流低下を防ぐ動作、1日に1.5ℓ~2ℓの水分と10~12gの塩分を摂取、睡眠リズムを整える、
運動で筋力 保持、暑気を避ける
●薬物療法…数種類あり人によって効き目が異なるので担当医の指示に従う
●周囲のサポート…身体の病気であることや治るまでに時間がかかることを周知・理解し、本人のペースに合わせて支える
(参考)一般社団法人日本小児心身医学会
<聴覚情報処理障害>
前回の「高次脳機能障害」に引き続き、今回も見えなくて理解されにくい障害をご紹介します。最近、ようやく知られるようになってきました。聴覚情報処理障害(APD)は「聞こえるけど理解できない」症状で、原因も治療法も研究段階です。
当事者の声からは、次のような困り感があるようです。
●音は聞こえるが、言葉として聞き取りにくい
●同時に話されると、どちらも聞き取れない
●話が長い、または話すスピードが速いとついていけない
何度も繰り返し聞いて嫌がられる、変な目で見られる、言われたことができず叱られる等、日常生活における心理的負担が大きいと推測されます。
特に学校で困難を感じやすいと思われること
●授業で聞き間違いや聞き逃しが多くて注意され気力や成績が下がる
●友だちとの会話で誰が何を話しているのかわからず疎外感を持つ
●頼まれたことを忘れて焦ったり責められたりして自信をなくす
本人ができる対処方法
●繰り返し聞いて確認する必要があることを周囲に理解してもらう
●静かな場所、1対1の会話、メモを取る・もらう等、環境を整える
●当事者会や掲示板などで情報を集める、症状に合う機器を使う
本人が気づかないことも多いそうです。何か変だと感じたら本人と話して、どの場面でどういう方法が使えるか一緒に考えることが支援の第一歩です。
(参考)
「APDマーク公式サイト」https://apd-mark.com/index.html
「聴覚情報処理障害(APD)のサイト」https://apd-community.jimdofree.com/
「未来スイッチ2020その先へ」https://www3.nhk.or.jp/news/special/miraiswitch/
<高次脳機能障害>
ケガや病気などで脳に損傷を受けた後に様々な症状が現れ、問題が生じることがあります。外見ではわかりにくく「見えない障害」とも呼ばれます。
●記憶障害:忘れる、新しく覚えられない、同じことを繰り返し質問する
●注意障害:ぼんやりミスが多い、2つのことを同時に行うと混乱する、
作業を長く続けられない
●遂行機能障害:計画・実行ができない、指示してもらわないとできない、時間を守れない
●社会的行動障害:興奮・暴力、思いが通らないと大声を出す、自己中心的
受傷や疾病の事実があり、脳の器質的病変が確認され、日常・社会生活に制約がある場合、高次脳機能障害と診断されます。
子どもは脳が発達途上にあるため低下した機能の回復が見込めます。年齢相応の発達に遅れが見られないかに注意する必要があります。また、症状により学習や学校生活に支障がある場合、「できないことを減らす」工夫が求められます。実は発達障害の子どもへの支援と共通する部分が多く、これまでの教育現場での取り組みを活かすことができるのです。
(参考:高次脳機能障害情報・支援センター、「子どもたちの高次脳機能障害」中島恵子(一社)児童青年精神医学会)
<ヤングケアラー>
不登校や学習意欲の低下などの原因として、最近注目されはじめました。
厚生労働省のホームページでは、「一般に、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども」とあります。
●障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
●家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
●障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている
●目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
●障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている
●日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
●家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
●アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している
●がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
●障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
(参考:一般社団法人日本ケアラー連盟)
厚生労働省と文部科学省の実態調査で、対象となった中学2年生の5.7%、全日制高校2年生の4.1%に世話をしている家族がいるとわかりました。
子ども自身がつらさを訴えることは少なく、家庭の問題に関わるのは難しいところはありますが、過度な負担や疲れがうかがえる場合は、障害福祉介護などのサービスや相談機関につなげる必要があります。
年齢や成長の度合いに不釣り合いな役割は、心身の成長や人間関係、学習・進路などに大きく影響します。「チーム学校」で取り組む課題と言えます。
<発達障害の薬物療法>
発達障害の診断を受けて服薬する児童生徒が増えています。
現在のところASD(自閉症スペクトラム障害)に効果が見られる薬はないとされており、ADHD(注意欠如多動性障害)について4種類あります。どの薬も「神経伝達物質」の情報伝達の仕組みに作用し、不注意や衝動的な落ち着きの無さを改善します。
<メチルフェニデート(商品名:コンサータ)>
・朝1回服用、日中12時間ほど効果が持続。すぐに効きやすい。
・主な副作用は、食欲減退、不眠症、動悸、悪心、体重減少など
<アトモキセチン(商品名:ストラテラ)>
・1日2回服用、終日効果が持続。効くまで時間がかかる。(2週間以上)
・主な副作用は、悪心、食欲減退、腹痛、嘔吐、便秘など
<グアンファシン(商品名:インチュニブ)>
・1日1回服用、終日効果が持続。効くまで1~2週間かかる。
・主な副作用は、傾眠、頭痛、不眠、めまい、口渇、便秘など
<リスデキサンフェタミン(商品名:ビバンセ)>
※2019年承認、小児期のADHD向け。まだ一般的ではありません。
・朝1回服用、終日効果が持続。すぐに効きやすい。
・主な副作用は、頻脈、不眠、頭痛、めまい、食欲減退など
服薬すると、集中力の向上や人との関わりが上手くいくようになるなどの効果によって自信を取り戻し、自己肯定感が向上することが期待できます。
いっぽうで、副作用や依存などのリスクがあり、効果の出方も様々です。学校での本人の状態を保護者に伝えると、受診の際の参考になります。
(「日経メディカルOnline」を参考に作成)
<医療 or カウンセリング>
学校でのカウンセリングに限らず、相談対応においては医療機関の受診が必要と思われるケースに出会います。
恐らく、一番多いのは「うつ状態」でしょう。対面で話すのがつらそうに見える、表情が暗い、言葉がなかなか出ない等の状態について、自力で立ち直るエネルギーがあるかどうかを考え、自力では無理かもしれないと思われたら受診をすすめます。
●医療とカウンセリングの大きな違いは、「診断するか、しないか」
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医療 |
カウンセリング |
心の不調をどう診るか |
機能面から診て、脳や身体の働きに注目する ☛「診断」 |
精神面から診て、感情、思考、ものの見方などに注目する ☛「見立て」 |
●「診断」や「見立て」への働きかけも異なる
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医療 |
カウンセリング |
対処方法 |
薬、外科的治療、入院など |
面談、心理検査、心理療法、 トレーニングなど |
●医療は応急処置、カウンセリングは漢方薬
医療は痛みや苦しさを素早く取り除くことができます。カウンセリングは、時間はかかりますが、不調になりにくい、あるいは不調になっても早く回復するような、いわゆるレジリエンスを高めることが期待できます。
どちらかを選ぶというより、状態に合わせながら両方を使い分けることをおすすめします。
<HSP>
Highly Sensitive Personの略で、子どもだと「HSC(Child)」となります。アメリカのアーロン博士(心理学者)が提唱した概念で、とても敏感・繊細な人たちのことです。日本では、「繊細さん」という表現も見かけます。
次の4つの面(DOES)が全て存在するとされています。
D:深く処理する(じっくり考える、慎重に可能性を探る、本質を衝く)
O:過剰に刺激を受けやすい(様々な刺激をもらさず受け止める)
E:感情の反応が強く、特に共感力が高い(自分や人の感情によく気づく)
S:些細な刺激を察知する(感覚のわずかな違いがわかり観察力も高い)
「あれ、いいことばかりじゃない?」と思われたかもしれませんね。
その通り、本来は“生きる力”になるはずの要素なのに、それらがとても強く発揮されるため、本人も周囲も「神経質」、「内気」、「細かすぎる」など、マイナス面として捉えてしまいがちです。
また、HSP自身が生きづらさを抱えることも問題です。ものごとの本質を追いかけたりあらゆる可能性について考えたりすると不安につながりやすいですし、いろんなことに気づくのは疲れることでもあります。
皆さまの周囲にも、やたらと鋭い質問をしてくるとか、そんなところまで気がつくの!と驚いてしまう人がいませんか?
「HSPかも?」と思う相手に接するときのポイント
・できても、できなくても、あなたが好き!という気持ちで接する
・相手を思いやったら、同じくらい自分も大事にしよう!と伝える
なお、HSPのなかには、内向的な人だけでなく、敏感さが好奇心や刺激を求める外交的な方向に働く人が3割程度いるそうです。さらに、それらが混じっているタイプもあるようで、今後の研究が待たれます。
<ロゴセラピー>
オーストリアの精神科医・心理学者フランクルが提唱した心理療法です。第二次世界大戦中のナチス強制収容所での体験をもとに著した「夜と霧」を読まれた方がいらっしゃるかもしれません。
内容的には、「人生の意味」を充実させたり「人生の価値」の評価方法を変えたりすることを援助するというもので、正直なところ分かりやすいような分かりにくいような感じなのですが、妙に心に響くものがあります。
①人は生きる意味を強く求める
これを、フランクルは“意味への意志”と呼び、大事なのは意味を問うことではなく、人は人生から意味を問われているのだということに気づいて、自分なりに意味づけしていくことだと言います。
②人は自分の意志で態度(行動)を決められる
そのときの状況に応じてどのような態度(行動)を選択するかは自由だが、人は自分にとっていま最も意味のある行動は何かを人生から問われており、その積み重ねが“自分が生きていることに確かな意味がある”という感覚をもたらすと言います。
③それぞれの人の人生は、意味もまたそれぞれである
ロゴセラピーでは、態度(行動)選択は人それぞれの“良心”、つまり自分以外の誰か(何か)のためを指針とすることが意味のある人生につながるが、その良心の内容や程度も自分で決めるものだと言います。
技法は、「逆説志向」(恐れている事態にあえて向き合い恐怖心を薄める)、「反省除去」(反省・後悔ではなく、実現したいことに集中する)というふうにすごく現実的です。①②③とのギャップを感じてしまうのは、きっと私の未熟さゆえ、と反省している場合じゃないと言われてしまいそうです。
<子どもの ” うつ ” >
“うつ”は大人だけでなく、子どもも発症します。これまでは反抗期や思春期だと思われていた様子の変化が、「うつ病」と診断されることが増えています。子どもの“うつ”の特徴は以下の通りです。
① 怒りっぽい、イライラする
大人は「憂うつな気分」を訴える → 子どもは自分の気持ちを上手に表現できず、親にあたったり物を壊したりする
② 過眠
大人は「眠れない」 → 子どもは「朝起きられない」、「一日中寝ている」
③ 過食
大人は「食欲不振」 → 子どもは「食べ過ぎ」になりやすい
実際には、「憂うつ(①)」「興味、喜びの喪失」のどちらか、もしくは両方に加え、先にあげた②③を含む7つの病状と合わせて5つ以上になることが診断基準です。病状には「体が重い」「疲れやすい」「自分を責める」「思考力や集中力の低下」「死にたいと思う」などが含まれます。
これらがほとんど1日中、2週間以上続いて、家庭や学校などで何らかの問題がある場合に「うつ病」と診断されます。
子どもの“うつ”の原因には、いじめや人間関係、学習などのストレスのほか、発達障害の二次障害としての発症も多いと言われます。本人も周囲も気づきにくいので、気になる子どもがいましたら早めにご相談ください。
<動機づけ面接法 >
心理支援の手法のひとつである“動機づけ面接法”をご紹介します。もともとはアルコール依存症を対象としていましたが、今では摂食障害や虐待などにも対象が広がってきています。
① 変わる(変わりたい)理由に焦点をあてる
困っていることを訴える人は“変わる”理由、つまり“変わりたい”という動機をすでに持っていますので、そこを具体化していきます。
一方で、現状で困っていない人には動機がありません。そのため、“もし変われたらどのような良いことが起こるか”を考えてもらうところから始めます。その“良いこと”を実現させるには何に取り組んだらいいかを考えます。
② OARS
相手に深く考えてもらう基本技法です。Open question(開かれた質問)、Affirming(是認)、Reflecting(聞き返し)、Summarizing(要約)の頭文字です。
できるだけ相手が話すように問いかけ、強みや努力を見つけ、相手の言葉をそのまま、または要約して返しながら気持ちを固めていきます。
③ チェンジトーク
話をしていて「わかっているけど。」「~は困る。」等が出てきたらチャンスです。“わかっている”ことの重要性、“困る”状況にならないためにはどうしたらいいかなどを話し合います。
相手が自ら動きだすよう、会話をリードするところがポイントです。
<睡眠 の力>
カウンセリングでは、必ずと言っていいほど睡眠に関する話が出ます。それほど、大切なものですが、どんなふうに大切なのかはあいまいな感じがします。睡眠の大切さについてピックアップしてみました。
1)認知症は睡眠不足から!?
睡眠中、脳内では認知症に関係しているとされる“アミロイドβ(ベータ)”という脳内物質を老廃物として排出する働きが起こるそうです。
2)「最近、記憶力が…」
学習や経験で得た知識や内容は睡眠中に整理され、無駄なものは削除して必要なものは固定されます。つまり、記憶が定着するために脳が働く時間として十分な睡眠時間をとることが大切なのです。
3)なんかイライラする
睡眠は感情にも影響します。不快な感情を整理するだけでなく、脳内の
不安をコントロールする部分が睡眠によって活発になります。ちなみに、
キレやすい子どもが睡眠不足解消とともに落ち着くことがあるそうです。
この他にも、免疫力が高まって風邪をひきにくくなる、ホルモンの分泌が高まって肌がきれいになる等、睡眠には多くの効果があります。
なお、“良い睡眠”のためには、個人に必要な時間の確保、睡眠が妨げられない環境、就寝と起床の規則性が関係します。
<フォーカシング>
私たちが日頃なんとなく感じていながらはっきり自覚できていない問題や気がかりなことに注意を向け、新しい気づきや行き詰まりを解決しようとするカウンセリング技法です。
ある出来事やそのときの気持ちを振り返るとき、通常は自分を責めたり思いが堂々巡りになったりしがちです。フォーカシングをやってみると、イライラやモヤモヤした感情は問題に向き合う不安を回避するために自分自身が作り出しているものだということに気づき、自己理解やスッキリ感を得られます。
歴史的に新しく、また、やってみると「こんなんでいいの?」とやや不思議な気持ちになるようなところもあるのですが、まずは手順をご紹介します。
まず、体の感覚を確認して痛いところや苦しいところを探りながら“気がかり”を拾い上げます。次にそれらが自分に何かを伝えようとしているのではないかと“聞き取って”みます。
ここが難しいところで、“気がかり”に対して「どこから来たの?」「何か必要なことはある?」「どうしたいのかな。」というふうに、その存在を肯定しながら「大丈夫って、どんなふう?」と、納得や安堵につながる変化を確認します。
簡単に言えば、いま自分が感じていること(フェルトセンス)に焦点をあて言葉(ハンドル)を見つけていく試みということです。自分ひとりでもやれますし、カウンセラーを聞き役(リスナー)としてやることもあります。
<ABC理論>
心理療法のひとつである“論理療法”の中心概念が『ABC理論』です。
A=出来事(Activating event)
B=信念(Belief)
C=結果(Consequence)
例えば、受験に失敗して絶望したとき、
A=受験に失敗
B=問題が悪かった
C=絶望
こんなふうに捉えていることがわかると、論理療法ではBを“非合理的信念”として修正しようとします。
実は、ABC理論には続きがあります。ABCときたらDEですよね。
D=反論(Dispute)
“その信念は単なる思い込みではないか、事実に即しているか”等を検証
E=Dによる効果(Effect)
“前向きで健全な気持ち(目指すところ)”
さきほどの受験の例なら、次のような感じでしょうか。
D=勉強不足を認める
E=次に向かって努力
何かにいつも腹を立てている人は、「自分以外に原因がある」という信念(B)をもっていたり、「こうあるべき」という信念(B)を譲れなかったりするようです。
B=信念は自分が作り出すものですが、いつの間にか自分自身を縛ってしまうやっかいな面があります。
合理的ではないかもしれない、あるいは相手の考えにも受け入れられる部分があるかもしれないというふうに柔軟に考えられると人間関係が上手く運ぶというわけです。
<アサーション>
アサーションを簡単に説明しますと、“相手の気持ちを思いやりながら自分の言いたいこともきちんと伝える技術”といった感じでしょうか。
アサーションでは、コミュニケーションを、次の3タイプに分類します。
①自分の思いを通すことを優先する「攻撃型」
②自分の気持ちを後回しにする「受け身型」
③相手も自分もよい気分で終わる「アサーティブ」
そして、「アサーティブ」を目指すために、自分の気持ちを伝え、相手を気遣い、落としどころを提案するというプロセスを使います。
例えば、急な予定変更を告げられたときの対応はこんなふうになります。
「えー、急に言われてびっくりしちゃった。」(自分の気持ち)
「でも、きっと事情があるんだよね。大丈夫だよ。」(相手を気遣う)
「よかったら、いつに変更するか、いま話していい?」(落としどころ)
「そんなにすんなり進んだら苦労はないよ。」と思われるかもしれませんが、何となく頭の隅っこに入れておくと役に立つことがあると思います。
<マインドフルネス>
ストレスチェック制度が始まって、働く人のメンタルヘルスが重要視されるようになっています。そのなかで、費用があまりかからず、いつでもどこでもやれる「マインドルネス」が注目されているのは自然な流れだと思います。
「日本では昔から座禅や瞑想をやってきた。それが海外で装いを新たにして戻ってきた。」という捉え方もあるようですが、ちゃんとシステム(メソッド)として明文化して使い勝手が良くなったと言えるでしょう。
やり方は簡単です。
①なるべく静かな環境で呼吸に意識を集中する。
②“吸う・吐く”をゆっくり繰り返しながら、体に入ってくる空気や吐く息の流れをイメージする。
慣れてきたら、つま先から頭のてっぺんまで順番に自分の体の状態を確認する作業を加えても構いません。
日ごろグダグダ考えていることから一時的に抜けると脳がリフレッシュします。でも、グダグダ考えるからこそ面白いアイデアが浮かぶという考え方もあるそうです。
脳が疲れてきたらマインドフルネスをやり、リフレッシュしたところでグダグダに戻るというのが現実的のようですね。
<箱庭>
砂の入った箱に人や動物、植物、建物などのミニチュアを自由に並べるセラピーです。
安心できる空間で見守られながら具体的でも抽象的でも自由に表現できることにより、言葉にならない思いが表現されやすいと言われます。
見守る側にとって大事なポイントは、「解釈しようとせず、クライエントが自ら変容する姿を見守る」こと。
カウンセリングで相談者に向かい合うとき、相手の言葉や表情、仕草などの目に見える部分をつい「解釈」しようとする姿勢になりがちです。もちろんそれらを無視していいわけではなく、勝手な解釈になっていないかどうかを十分に吟味する必要があるということです。
相談者の多くは、どうしたらいいかわからなくなったときに誰かに相談する、つまり、状況や考えや気持ちなどを話すことで自らの思考を見つめて整理しようとします。それなのに、カウンセラーが独りよがりな解釈をぶつけるのは大変失礼なことです。
自分の思いを表現する方法は他にもありますが、特に子どもにとって遊びのような箱庭は受け入れやすいため活用されています。
<チームビルディング>
本来は、新入社員など、これから人間関係を作っていく集まりにおけるオリエンテーション色の強い研修ですが、たまに学校でも活用します。
内容は、4~5名のチームに分かれて、制限時間内に同じ材料を使って出来るだけ高く自立する新聞紙タワーを作るというものです。
加えて学校では「人を非難しない」というルールを追加設定します。具体的に言葉を提示するとわかりやすいようです。
「そんなんじゃダメだよ。」はNG → 「私はこうするといいと思う。」
「早くして!」はNG → 「急いでくれるとうれしい。」
「何やってるんだよ。」はNG → 「いっしょにやろう。」
相手が気持ち良く作業できるような気遣いについて説明すると、子どもたちは良く理解して諍い(いさかい)もふざける様子もほとんど見られなくなります。
楽しそうに取り組む中、リーダーシップを発揮する子どもがいたり、人間関係が良さそうなチームが結果を出したりなど、見守る教職員もいろいろ発見があるそうです。